関西の写真史
中川繁夫:著


タイトル
図書館に写真集を!


前年の1981年11月、「フォトシンポジウム京都」を開催しましたが、その討議内容をふまえ、畑祥雄さんの発案で、図書館に写真集を集める、寄贈を募る、という話がありました。いつ、どのようにして話が成り立ってきたのかの記憶はないんですが、1982年の1月ごろには、大筋の話がまとまっていたように思えます。

当時、国立民族学博物館の梅棹忠夫館長がJPSの会員になられているというので、当時にはJPSの会員である畑祥雄さんが、アポイントをとられ、万博跡地の民博を訪問しました。記憶をたどってみて、畑祥雄さんがJPSの総会(東京開催)があり、梅棹さんと一緒になるということで、そこでアポを申し入れるとのことでした。結果として、梅棹館長との面会の約束がとられたのでした。

図書館に写真集を!、30分の面会時間のなかで、梅棹館長が「京都府立総合資料館」に連絡していただき、京都府立総合資料館が面談してもらえることになったのです。その足で、京都府立総合資料館へ赴いたように思います。民博から総合資料館へと動いたのは、畑祥雄さんと中川繁夫。大筋での受け入れがまとまって、いよいよ行動が開始されます。

京都府立総合資料館に写真集コーナーができる。その年の写真の日(6月1日)がオープンの日、とスケジュールが決まります。呼びかけ文を印刷しそれぞれの手元に集められた名簿をもとに、郵便による発送。およそ三千通。宛名書きは今でいうボランティア、そうして新聞記者会見は府立芸術会館の会議室でおこない、オープンの運びとなりました。

このあとの文は、当時の賛同者を募る呼びかけ文書からの抜粋、それをまとめていきます。
呼びかけ人は、岡田悦子(ギャラリー・DOT)、畑祥雄(写真家・JPS会員)、井上隆雄(写真家・JPS会員)、堀内義晃(写真家)、中川繁夫(写真家・映像情報編集者)です。
連絡先は「図書館に写真集を!呼びかけ人会」、ギャラリーDOT気付。
写真集の送り先は、京都府立総合資料館内、「図書館に寫眞集を!呼びかけ人会」、’82年6月1日以降は「写真集コーナー」宛。

1982年6月1日、京都府立総合資料館の閲覧室に写真集コーナーが設営されました。

    

1982年は、現在につながる写真をめぐるムーブメントとして、記憶しておくべきことがいくつかあります。順次、このなかでとりあげたいと思っています。そのひとつに、「図書館に写真集を!」のムーブメントがあります。現在の「宝塚メディア図書館」につながる「写真図書館」の設立が1992年。その10年前の出来事です。

「図書館に写真集を!」構想の記者発表が行なわれたのが1982年4月27日、ゴールデンウイーク前のことでした。4月28日(水)には京都新聞の紙面に五段抜きで報道され、以後、朝日新聞、毎日新聞など主要メディアに記事が載りました。反応は大きかったと思います。6月1日の寄贈日までには、寄せられた写真集は約600冊余り。公設スペースに初めて、写真集専門のコーナーが設けられたのでした。

以下、呼びかけ文(畑祥雄さんが起草)を掲載します。
「図書館に写真集を!」
1839年、ダゲールが初めて写真術を発明して以来140年余、今や、記録・芸術・日常生活などのあらゆる分野において映像(写真、映画、ビデオ等)が使用される時代になりました。しかし、映像は現代社会にとって不可欠なメディアとして存在していながら、他の分野(例えば書物は図書館に、絵画や彫刻は美術館に、建築は文化財として)に比べ、保存され閲覧や鑑賞ができる充分な体制にはなっておりません。

日本に写真術が初めて伝達された幕末以来、数多くの写真が写されてきました。しかし、私達はそれらの写真を断片的に見たり記憶に残しているにすぎません。また、名作といわれる映画でも書物でしかその内容を知ることができません。現在の図書館や美術館ではこれらの映像を体系的に保存して鑑賞することはできず、国会図書館においてさえ書名や著者名以外の分類から写真集として引き出すことができるのは、わすか566冊でしかありません。
(中略)

しかし、今、私達は過去に出版あるいは発表された写真集や映画をどこに行けば見ることができるのでしょうか。私達5人の呼びかけ人は、この疑問を出発点にして、昨秋より「図書館に写真集を!」という運動を続けてまいりました。その結果、今年の6月1日(写真の日)から、京都府立総合資料館の図書館部門に、新たに<写真集コーナー>の設置が実現することになり、書名・著者名・分類以外に写真集目録カードが作成されることになりました。
(中略)

しかし、この運動を実らせ継続させる為には、出版関係会社や写真家、寄贈される個人各位の深い御理解と御厚意を待たなければなりません。一冊でも多くの写真集が集まり、公的機関が保存の管理責任を負い、あらゆる分野の人々が閲覧できる機会を得ることは、写真集そのものの存在や意義を高めることにもなると思います。このようにして京都府立総合資料館に「写真集コーナー」がモデルケースとしてできれば、これをきっかけに各地の図書館が写真集の収蔵を積極的に進めることを私達は願っております。

以上の趣旨を御理解いただき「写真集寄贈」に、御支援ご協力を賜りたくお願い申し上げます。
(後略)

以上の呼びかけ文に、賛同者名簿が添えられて、関係者(約3000人の個人)に郵送されました。

    












































































































































































































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最新更新日 2018.11.23


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