関西の写真史
中川繁夫:著


ギャラリー・DOT

    

写真の展覧会において、オリジナルプリントと呼ぶ写真作品がギャラリーに飾られるようになるのが1980年初頭です。京都は下鴨にオリジナルプリント専門のギャラリーとして、「ギャラリー・DOT(ドット)」が1980年11月、オープンします。また、神戸では、中央区北野に「キタノサーカスフォトイン」がオープンします。

ギャラリー・DOTは主に日本の写真家たちの作品を集め、展覧会を開き、展示された作品が売買される、いわゆる写真を売るギャラリーとして京都に誕生したものです。神戸のキタノサーカスフォトインは、ギャラリーオーナーが自分で収集してきたアメリカのプリント中心に売るギャラリーとして1980年11月にオープンします。

1980年は、関西の写真シーンにおいて、オリジナルプリントを扱うギャラリーが誕生する記念すべき年となります。オープニング展は1980年11月17日〜11月23日、子供のアトリエ展(鈴木基寛氏指導)による4才から11才までの子供たち 。ギャラリーオーナーの岡田悦子さんは、絵本作家を目指したこともある経験から、この展覧会企画になったようです。続いて第二回目の展覧会は、1980年12月09日〜12月21日「BELCA HOUSE EXHIBITIO '80」出展者は、相川佳久雄、鈴鹿芳康、高田宣夫、和田矢代依という顔ぶれ。

いよいよ1981年には、1981年01月25日〜02月15日、写真家6人によるオリジナルプリント展、出展は杉本博、鈴木俊宏、高木松寿、橋本文良、服部冬樹、松尾幹生という写真作家たちでした。このようにして、関西在住の写真家にとどまらず、日本人写真家が作品発表の場として、オリジナルプリントを売るためのギャラリーとして、展覧会を開催しることになります。1981年10月13日〜11月22日には、フランスの写真家エルスケンの「セーヌ左岸の恋、パリ1950〜1954」(Ed Van Der Elsken)を開催し、オリジナルプリントギャラリ−としての地位を不動のものにします。

オリジナルプリント、それはいったい何ぞや?。写真愛好家たちにも、まだその意味合いが十分に理解されないことが多かった年代に、若い作家、中堅作家、写真作家としての誕生を育む土壌を作っていきます。関西において、特に京都において、その存在は、写真への認識を変えさせていく場となっていくものでした。のちに別企画でフォトハウスが京都に誕生しますが(1984年11月)、その事務局としての機能、つまりギャラリーとして、作家を育ませるための教育を実施していくことになります。

レンタルギャラリーではなく、オリジナルプリント展示を主体にしたギャラリー・DOT。作品制作のための基礎技術、ゾーンシステム取得を基礎に置いたワークショップ開催の事務局として、ギャラリー空間が機能してきます。とはいえ、関西の写真家たちが盛んに展覧会を開くというには、まだ時期が早くて、おおむね東京在住の写真家たちが展示することになります。その後において、大阪をメインにオリジナルプリントギャラリーがオープンしますが、京都におけるギャラリー・DOTが、その先を走ったといえます。

それから30数年を過ぎて、いま現在(2012年9月)においても継続して運営されているギャラリー・DOT。オリジナルプリントの歴史を語るうえで、欠かせない貴重な存在であることは間違いありません。関西という地方のことが話題になることが少なく、京都の話題はなおローカルな話題ですが、ここに関西の写真史、1980年代を書き起こしてきて、紹介するところです。






















































































































フォトハウス

最新更新日 2018.11.23


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